近年、不動産投資の融資が厳しい傾向にあります。
原因の一つに不正融資問題があります。2018年1月「かぼちゃの馬車事件」という不正融資の問題です。
女性専用のシェアハウスを運営する会社が工事会社から建築費の50%という不当な額のキックバックを原資にサブリースを受けていました。
運営会社は高所得者をターゲットに「30年間家賃保証、利回り8%以上」という営業を行っていました。
さらに運営会社と銀行が結託、審査書類の改ざんが常態化し、不正融資が発覚しました。
その他、不動産投資家向け融資の不良債権増加や金融庁による引き締めなどの影響を踏まえ、融資が厳しい傾向にあります。
こうした問題から、金融機関は審査時に申込者との面談を行うことになりました。
不動産投資の融資の審査基準については、資金力と属性を重視する傾向にあります。
ここでは、その融資の審査基準について解説します。
大きく分けて物件の収益性と属性に分けられます。
空室リスクと利回りについて評価されます。
空室リスクには、入居者が見つからず、家賃収入が入らない状態を指します。
原因としては、競合物件が多いことや物件の管理が不十分、募集活動が乏しいなど、さまざまです。
騒音やペット問題など、住民のトラブルが多いことにより、空室になるケースも少なくありません。
利回りとは、物件価格に対して1年で得られる収益の割合です。表面利回りと実質利回りがあります。
表面利回りは、不動産から得られる年間の総収入から購入額で割ったものです。
表面利回り = 年間総収入 ÷ 購入額 × 100(%)
実質利回りは、不動産から得られる年の総収入から不動産にかかる諸経費を引き、購入額で割ったものです。
実質利回り = ( 年間総収入 – 購入時の諸経費 ) ÷ 購入額 × 100(%)
属性とは、職業や勤続年数、勤務先、雇用形態、年収、家族構成、借入状況などを指します。
不動産投資の融資では、安定性が重視される傾向があります。
たとえば、転職を繰り返しているような場合は安定しているとはいえません。
勤続年数が長い方が評価されるのです。
ただし、勤続年数が長いとはいっても、非正規雇用やアルバイト、派遣、契約社員などは、審査が通りにくい可能性が高いです。
また、個人事業主よりも公務員や医師、弁護士などが審査に通りやすいケースが多いです。
不動産経営者としての信頼性も問われます。
たとえば、信用金庫は地域密着型です。
そのため、審査の際に人間性を1つの判断基準にしているところもあります。
人脈があり、事業計画がしっかりしているとよい評価をされることもあるのです。
また、最初は少額から開始しても、徐々に拡大しながら継続的な取引をしてもらう方は金融機関にとっても歓迎されます。
金融機関は、口座の出入金明細を見ることが可能です。
中には家賃の入金があれば、直ちに引き出す方もいるでしょう。
そのため、他業に振り替えているという、疑われる可能性も否定できません。
金融機関がチェックする内容として、もう1つ重要なのが融資申込者の信用情報です。
3つの信用情報登録機関で管理・登録されています。
過去のローン借入履歴や返済情報、支払遅延の有無などがあげられます。
支払遅延については、携帯電話料金の支払いなどです。
信用情報の開示請求を行うと、開示報告書が届きます。
ただし、開示手数料がかかります。
開示報告書には「返済状況」の欄に「異動」と記載されている場合があります。
いわゆるブラックリストに記載されるということです。
たとえば、返済日より61日以上、または3ヶ月以上の遅れが生じた場合、利用者に代わり、保証会社が代位弁済する場合、裁判所が破産手続き開始決定をするなどです。
「異動」と記載されないためには、支払遅延を起こさないことが重要です。
融資審査を通過するには、複数のクレジットを持っていれば、必要なもの以外を解約するようにしましょう。
また、カードで引き落としにしている場合、金額が足りず、結果的に延滞するケースも少なくありません。
あらかじめ、支払い時期を確認しておくとよいでしょう。
融資を希望する金融機関との電話や面談は、誠実に対応することが大切です。
交渉では嘘はつけないので注意しましょう。