築年数の経過したマンションを購入したとき、いつ建て替えになるのだろうかと、そう思われる方も少なくないのではないでしょうか。
スラム化した「限界マンション」が近い将来、社会問題なるのではと心配されています。
首都圏で最も古いマンションは築60年を超えおり、1956(昭和31)年に完成した物件がいまだなお残っているというのは驚きですよね!
国内第1号の分譲マンションである渋谷区の「宮益坂ビルディング」(1953年築)は既に建て替えられておりますが、築年数が30年を超える物件を老朽化物件と呼び主に東京都を中心とする数は2015年時点で150万戸を超えます。
2017年末では築30年超が184.9万戸。
さらに2025年には2倍弱の296万戸に増え、2035年には3倍強の485万戸にまで膨らむと予想されています。
このうち、築40年超の割合が2025年には約半数、2035年には約6割を占めることになります。
築30年、40年を過ぎた賃貸物件は外壁などの劣化がかなり目立ち、人気もかなり落ちてきます。
今回は低落した入居率をアップさせる手段の一つになる建替えについて解説していきたいと思います!
まず分譲マンションでは区分所有法という法律があり、建て替えを数場合はこの法律に基づき建て替えの議決を取らなくてはなりません。
区分所有法では5分の4以上の賛成でマンション建て替えの決議は可能になります。建て替えに反対する人の権利を買い取ることも出来ます。(売り渡し請求)
マンションの建て替えでは所有者が建て替え費用を負担することが、1戸あたり1,000万円が相場とされています。
修繕積立金を建て替え費用に充当できるのではと思われがちですが、修繕積立金は大規模修繕の時には使用することは可能ですが、建て替えの時は原則使用できません。
また賃借人は部屋を借りて住んでいるため、費用の負担はありません。
ただし現実問題として建て替え費用が捻出できない方がいたり、建物の老朽化を賃貸借契約解消の正当事由としない借地借家法により賃貸人がなかなか出て行かなかったり、買い取り価格を吊り上げられてしまったりなどの様々な理由によりうまくマンションの建て替えが進みません。
一般的に建て替えがスムーズに進む物件は、自己負担金が発生しないケースに限られるようです。
容積率に余裕がある物件は以前よりも大きな建物を建ててマンションの総戸数を増やします。建て替えにより増えた部屋を販売することによってディベロッパーの利益が見込めるため自己負担金が発生しません。
つまり容積率に余裕が無い物件は建て替えが難しくなってきます。
実際に2018年4月1日現在で274件(実施準備中9件含む)しか建て替えに成功していません。(阪神大震災関連は除きます)
そこで耐震性不足の老朽マンションの建替え等を促進するため、マンションの建替えの円滑化等に関する法律の一部を改正する法律(平成26年法律第80号)(以下「改正マンション建替え法」という。)が平成26年6月25日に公布、同年12月24日に施行され容積率の緩和特例が設けられています。
容積率の緩和特例とは、耐震性不足の認定を受けたマンションの建替えにより新たに建築されるマンションで、一定の敷地面積を有し、市街地環境の整備・改善に資するものについて、特定行政庁の許可により容積率制限を緩和されます。
国交省ホームページ マンション建替え等・改修についてはコチラ
では実際に建て替えに成功した事例を見てみましょう。
桜水上ガーデンズの建て替えは自己負担0円で実現できたとても有名な物件で、改正マンション建替え法の施行後もっとも大規模な建て替えプロジェクトでもありメディアでも多く取り上げられました。
桜水上ガーデンズは元々、東京オリンピックの翌年である1965年に建設された3万5千平米の大規模な団地でした。
なぜ0円で建て替えが可能になったのか?
主な勝因としては
建て替え後は総戸数404戸から2倍以上の878戸まで増やすことできました。
さらに好立地だったため売却収入が高く建て替え費用を賄うが出来ました。
団地時代に50~60平米に住んでいた住民が70平米の住居に移り住むことができています。
ただし建て替えに反対した住民との裁判などで費用がかさみ仮住まい費用は全員自己負担となりました。
旧 ビレッタ朝日は1973年に建設された10階建ての総戸数58戸のマンションでした。
築年数の経過とともに老朽化や安全性への不安、多くの不具合があったこと更に耐震上の問題があったため建て替えに至りました。
建て替え後アトラス押上というマンション名に生まれ変わり、総戸数が90戸にまで増えました。
総戸数は増えましたが、建て替え時の自己負担金は墨田区の集合住宅条例(このマンションの場合、部屋を一定以上の広さにしなければならない)への対応などにより1,000万円以上に膨れ、決議後に転出する権利者が増加してしまいました。
ですが建物の解体費用は国、都、区の耐震助成により賄うことが出来ました。
建て替えであればリフォームやリノベーションと違い間取りからデザイン、設備などを一から自由に選択できるため、入居率の好転が期待できます。
老朽化したアパートやマンションでは家賃収入よりも修理や修繕にかかる支出のほうが多くなってしまいますが、新築になれば老朽化したアパートに比べ修理費等はかかりませんし、新築になることで家賃収入も大幅な増加が期待できます。
一から間取りなどを選択できるため賃貸面積の増築が可能な場合は総戸数を増やすことができ家賃収入の大幅アップも期待できます。
また建て替え時に新たな減価償却が発生するため控除額が増え節税効果も期待できます。
旧耐震と呼ばれている1981年以前の建物は古い耐震基準での建設をされているため、建て替えをすることにより地震による倒壊のリスクも軽減することが出来ます。
建築基準法で定められた「建築確認・中間検査・完了検査」の3つが全て完了し、その建物が法律の基準に適合していること認められたときに発行される検査済証がもらえ、安心、安全です。
まず一番に思いつくのは費用面でしょうか。
建て替えはリフォームやリノベーションに比べ費用は高額になります。
ローンを完済していない段階での建て替えあれば、経営的にかなり大きなリスクを伴うことになります。
また工事費用ばかりに注力しがちになりますが、新築になるため各種税金(不動産取得税・固定資産税・都市計画税・登録免許税など)がかかることにも注意が必要です。
さらに全部屋空室であれば問題は無いのですが、入居者が入っている場合は退去してもらうための立ち退き料や、立ち退きの交渉にも細心の注意が必要になります。
老朽化による賃貸借契約の解消は借地借家法では正当事由とならないため、入居者に何ら落ち度が無いのに退去してもらうことは、かなりデリケートな問題になり言葉の行き違いで大きなトラブルになりかねません。
また工事の期間についても気になるとことです。
解体工事の有無 | 木造・S造 | RC造 |
---|---|---|
解体なし | (階数×1ヶ月)+1ヶ月 | (階数×1ヶ月)+3ヶ月 |
解体工事有り(アパート) | 2週間+(階数×1ヶ月)+1ヶ月 | 2週間+(階数×1ヶ月)+3ヶ月 |
解体工事有り(マンション) | 1ヶ月+(階数×1ヶ月)+1ヶ月 | 1ヶ月+(階数×1ヶ月)+3ヶ月 |
一般的な工期はこの表のようになりますが、地盤改良工事が必要かどうかによっても工事期間は変わってきます。
どの不動産でも必ず起こる老朽化問題。
区分マンションと一棟アパート・マンションの場合で流れや費用などが変わってきますが、建て替えには一長一短があります。
場合によってはリノベーションなどの他の選択肢を選ぶのも一つの手でしょう。
ただ不動産投資を行っていく上でリフォームやリノベーションに限界を感じたら、いつかは建て替えをしなくてはなりません。
その「いつか」に対して、今から下調べや準備をしてみてはいかがでしょうか?