新築物件を建築しようとした場合、建設労働者や技術者の日当が5年前は約1万5000円程度でしたが、現在では約2万円程度にまで上昇しました。
また、働き方改革の影響により、将来的には1日あたり5万円程度にまで上昇すると言われています。
日本における建築費の高騰は、複数の要因が絡み合っています。
今回は、何故ここまで建築費が高騰しているのか、原因と今後の予測をご紹介いたします。
まず原因の1つ目は、建設労働者や技術者の需要が高まり、それに伴って人件費が上昇した点です。
2つ目に、建築に必要な建材の価格も上昇しており、特に鉄鋼や木材などの主要な資材が高騰してしまっている事も原因として上げられます。
そして3つ目は、政府や自治体の規制・法令の厳格化により、建築プロセスが複雑化し、建設コストが増加しているためです。
これに加えて、土地価格の上昇や都市部での土地の供給不足も、建築費用の上昇に影響を与えています。
需要の増加も建築費の高騰に付随しており、人口増加や都市化の進展に伴い、住宅や商業施設などの需要が増えています。
このため、建築業界全体の競争が激化し、建築費用が上昇していると言えます。
建設業界では、職人の人手不足により人件費が上昇しています。
国土交通省によると、ピーク時には685万人の建設業就業者がいましたが、それが平成9年から平成28年までの間に492万人まで減少してしまいました。
さらに、労働者の年齢構成を見ると、55歳以上が34%、29歳以下が11%と建設業の高齢化が進んでいます。
つまり若手の人材が不足している上に、上の世代の職人たちも年齢による引退で徐々に減っているのです。この流れが続く限り、将来も人件費の上昇が予想されます。
ウッドショックとは、木材価格の急騰を指します。
日本では、建築用の木材の大部分を輸入に頼ってきました。
しかし、最近はこれらの輸入が途絶える事態が生じています。
その背景には、アメリカを始めとする諸外国での動きがあります。
新型コロナウイルスの影響で、リモートワークの普及により、都心部よりも郊外に住居を求める人々が増加しました。
同時期に中国でも住宅需要が急増しました。
これらの大国での住宅需要の拡大により、日本における木材の入手が難しくなり、結果として木材価格が急騰しました。
さらに、日本の建築用木材に対する基準が厳しいこともあり、輸出業者は「基準の厳しい日本に輸出するよりも、アメリカや中国に輸出したほうが良い」と考えるようになったのです。
したがって、木材価格がコロナ禍が収束した後も上昇する可能性はあるものの、価格が大幅に下がることは期待できません。
ウッドショックに留まらず、鉄の価格も急速に上昇しており、この現象をアイアンショックと呼んでいます。
鉄筋や鉄骨などは、マンションやビルの建設に限らず、住宅設備にも使用されています。
そのため、建築資材だけでなく住宅設備の価格にも影響を及ぼすのです。
鉄の価格上昇の要因は、ウッドショックと同様にアメリカや中国での住宅需要の増加にあります。
新型コロナウイルスの影響による規制がだんだんと緩和され、経済活動が再開されるに伴い、住宅需要が急増しました。
特にこれらの国々では鉄を多く使用するため、主原料である鉄鉱石の供給が不足し、価格が高騰しています。
日本は鉱物資源の大部分を輸入に頼っており、鉄鉱石については100%が輸入に依存しています。
世界的な供給不足により、価格の高騰は避けられません。
日本が建築資材の多くを輸入に頼っているため、円安の影響を強く受けることになります。
最近の円安の原因は、日本の低金利政策とされています。
簡潔に言えば、「建築費の高騰は今後しばらく続く」と予測されます。
現在の高騰は、人材不足、ウッドショック、地球温暖化、世界情勢、円安……などさまざまな要因が絡んでおり、解決するのは容易ではありません。
需要増加や市場の変動も影響しています。
特に、木材や鉄などの主要資材の価格は上昇し続けており、高騰が収まる見通しはありません。
そして、仮に今後これらの問題が解決されたとしても、市場に価格が反映されるまでには数年かかると見込まれています。
世界的に見ても、木材やアルミニウム、ガラスなどの素材の価格が上昇し続けており、一度値上がりしたものが再び値下がりすることは非常に稀です。
こうした資材の高騰という事情も頭に入れ、かかる費用をしっかりと把握し、タイミングを見計らいながら建築を検討をしましょう。