店舗の撤退を検討する際、多くの経営者が想像以上の高額な撤退費用に驚くことがあります。
特に新規出店の際には退去のことまで考える余裕も無くオープンする方もいるため、「初めての撤退」はトラブルが多い傾向です。
業績不振や急な事情で撤退を余儀なくされた場合、その費用は予想をはるかに超えることもあります。
実際、店舗の規模によっては数千万単位の費用を支払うことになるケースもあるでしょう。
このような状況を避けるためにも、退去費用について理解しておくことが重要です。
実情として、新規出店した店舗のうち約7割が3年以内に閉店してしまうと言われています。
そのため、いずれ訪れる可能性のある撤退に備えて、事前に費用や手続きについて学んでおくことが、経営の安定と継続につながります。
店舗を退去する際には、様々な費用が発生します。
これらの費用は、借りている物件やリース契約によって異なります。
まずは、賃貸借契約書を確認し、具体的にどのような費用が必要になるかを把握しましょう。
原状回復とは、物件を返却する際に、物件の状態を「入居前の状態」または「本来の状態」に戻すことです。
具体的には、自然災害や経年劣化による物件の劣化や損傷については貸主が負担しますが、借主が故意や過失、管理注意義務の違反、不適切な使用によって生じた損傷や劣化に関しては、借主が責任を負い、原状回復を行う必要があります。
原状回復工事の相場は小売店などの店舗で「3万円から8万円程度」です。
飲食店の場合はスケルトン工事が必要であり、工事会社を選別する余地が少ないため、費用が高額になりやすい傾向にあります。
退去したい場合、借主は貸主に書面で解約予告通知を提出する必要があります。
解約予告通知は、借主が物件を返却する意向を貸主に通知するものであり、通常、退去予定日の6カ月前までに提出する必要があります。解約予告通知を提出した後の6ヵ月間は、退去日まで引き続き賃料を支払う必要があります。
定期借家契約の場合、利益が見込めないため店舗を退去したいが、まだ契約期間が残っているために退去ができない……というケースがあります。
この場合、賃料を支払いながら営業するよりも、店舗を閉鎖して空家賃だけを支払う方が赤字額が少なくなることもあります。
しかし、店舗を閉鎖していても、契約期間中は残存賃料を支払わなければなりません。
契約期間途中で解約したい場合、違約金の支払いが必要となることがあります。
また、保証金が没収されることもあります。
賃貸借契約を結ぶ際、借主は貸主に保証金(敷金)を預ける必要があります。
契約に応じて、保証金の償却額は異なります。
契約が終了した後、保証金は全額返還される場合もありますし、10%、20%、50%などの償却率が適用されることもあります。
後継テナントを見つけて居抜き物件として引き渡すことで、本来自分が負っていた原状回復義務を後継テナントへ承継できるため、退去費用を大幅に削減できます。
また、後継テナントが見つかると違約金などの免除も交渉しやすくなります。
解約通知後の賃料や違約金、原状回復費用は、次のテナントが見つかるまでの損失を補填するために設定されています。
そのため次のテナントを自ら見つけることで、貸主も賃料収入が途切れることがなくメリットが生まれるので、諸費用の免除交渉がしやすくなるのです。
現在使っている厨房機器やカウンターなど、造作すべてではなくてもその一部を次の入居者に譲渡することで、その分の処分費用や解体工事の費用をカットすることができます。
店舗を退去する際には、さまざまな理由で多額の費用がかかることがあります。
これらの費用を少しでも削減できれば、次の店舗出店につながる可能性があります。
出店計画を練り、膨大なデータベースに基づいて出店を進める企業でも、年間数店舗は閉店しています。
そのため、退去やその費用を考慮することは、出店戦略において重要です。
いざというとき適切な対応が取れるように、退去費用について早めに理解し、計画を立てておきましょう。