マンション管理組合の組合員は、管理費を支払う必要があります。
しかし、マンション管理費の滞納が増加傾向にあります。
国土交通省「平成30年度マンション総合調査結果」によると、全国のマンションのうち、管理費や修繕積立金を3ヵ月以上滞納しているマンション管理組合は24.8%に上っています。
特に築年数の古いマンションで滞納の割合が高くなっているのです。
近年は新型コロナウイルス感染拡大により、収入が激減し、マンションの管理費を滞納する人も増加しています。
分譲マンションの共用部分の日常的な維持・管理に使用する費用を指します。
マンションでの生活を安全かつ快適に過ごすためには、定期的な点検や管理が欠かせません。
国土交通省がマンション管理規約の基準として定めている以下の「標準管理規約」の第27条に管理費が定められています。
具体的には、エントランスや共用廊下、ゴミ置き場などの清掃、共用部分の電気代、備品交換、エレベーターや自動ドアの電気代・点検費・修理代、電気・給排水設備の保守点検費などがあります。
管理費は、マンション標準管理規約に定められており、専有面積に応じて管理費の負担額が異なります。
また、地域やマンションのグレードの高さでも管理費の負担額は変わります。
国土交通省「平成30年度マンション総合調査」によると、一般的な管理費の相場は、平均の月額で単棟型マンション16,213円、団地型マンション14,660円となっています。
経済の長期的な低迷で収入が上がらず、住宅ローンの返済を優先するなど、管理費を滞納する人が増加傾向にあります。
昨今の新型コロナ感染拡大やロシアによるウクライナ侵攻、円安による物価高の影響など、さまざまな要因で家計が苦しくなり、管理費の滞納につながっていると見られます。
老後資産の不足に加え、2年連続の年金減額により、管理費を支払うことが困難になることも想定できます。
マンションの所有者が管理費を滞納しており、その後、亡くなるケースもあります。
このような場合は、相続人全員が相続放棄をする可能性が高いです。
最近では高齢者の孤独死が社会問題となり、相続放棄の事例も相次いでいます。
(参考:朝日新聞DIGITAL「相続放棄マンション、積み上がる管理費滞納 価値に影響」)
1ヶ月の滞納では、電話やメールにて督促を行い、2〜3ヶ月の滞納が続くと直接訪問するといった対応策が考えられます。
それでも滞納者が支払う意思がない場合、マンション管理組合の名前で支払催告書を内容証明郵便で送ります。
内容証明郵便を送っても支払う意思がない場合は、状況に応じて、支払督促、少額訴訟、通常の訴訟手続などの裁判手続に入ります。
また、管理費の不足により、マンション全体の管理が不十分になったり、他の区分所有者が立て替えなければならない状況になれば、区分所有法上の「共同の利益に反する行為」に該当し、管理組合からその区分所有者に対して競売請求の訴えを請求することが可能です。
(参考:東京地判平18・6・27判時1961・65)
マンション管理費は「権利を行使することができることを知った時から5年」または「権利を行使できる時から10年」で時効になります。
時効を成立させないためには、民法上の時効の完成猶予や時効の更新を行う必要があります。(民法147条〜154条)
時効の完成猶予は、一定事由が発生した場合は、その事由が終了するまでは時効が完成しません。
時効の更新は、時効期間が進行している最中に一定事由が発生した場合は、進行中だった時効期間がなかったものとされます。