建築物等の解体や補修工事などに伴う、石綿(アスベスト)の飛散防止のため、2021年4月1日に「大気汚染防止法」の改正により、アスベスト工事に関する規制が強化されました。
改正のポイントは、以下の通りです。
これまでは、レベル1:石綿含有吹付け材、レベル2:石綿含有断熱材・石綿含有保温材・石綿含有耐火被覆材の2つが対象でした。
しかし今回の改正で、レベル3:その他の石綿含有建材(成形板・仕上塗材等)が追加されました。
アスベストとは、天然に生成した繊維状のケイ酸塩鉱物です。
直径は0.02μm~0.35μmで、髪の毛の5,000分の1程度の細い繊維です。1955年(昭和30年)頃から「せきめん」「いしわた」とも呼ばれています。
クリソタイル(白石綿)、角閃石系のクロシドライト(青石綿)、アモサイト(茶石綿)、アンソフィライト、トレモライト、アクチノライトの6種類です。
(参考:国土交通省「アスベスト対策Q&A」)
耐熱・耐火性、耐摩耗性、耐薬品性、耐腐食性、防音性、絶縁性など、数多くの優れた性質があります。
飛散した石綿(アスベスト)を吸い込むと、肺線維症(じん肺)、悪性中皮腫、肺がんの原因になると言われています。
石綿を吸い込んでから約30年以上の長い潜伏期間で中皮腫を発病することが多いとされています。
厚生労働省の人口動態統計によると、中皮腫の死亡者数は1995年(平成7年)の500人から2019年(令和元年)には1,466人となっており、約20年間で3倍程度の増加となっています。
2006年9月1日に施行された改正労働安全衛生法施行令により、アスベストの使用が全面禁止となりました。
具体的には、アスベストを重量0.1%を超えて含有するすべての物の製造、輸入、譲渡、提供、使用が禁止されました。
また、宅地建物取引業法改正により、石綿(アスベスト)使用の有無の調査結果が記録されいる場合は、その内容について重要事項説明で書面により説明が必要となりました。
(宅地建物取引業法35条1項14号)
大気汚染防止法で定める特定建築材料が「吹付石綿その他の石綿を含有する建築材料」になります。
つまり、レベル1(石綿含有吹付け材)レベル2(石綿含有断熱材・石綿含有保温材・石綿含有耐火被覆材)に加え、レベル3(その他の石綿含有建材)が規制対象となります。
元請業者は、事前調査結果の記録を作成し、解体等工事が終了した日から3年間保存しなければなりません。
一定規模以上の解体等工事について、石綿含有建材の有無にかかわらず調査結果を事前に報告することが義務付けられます。
解体等工事の元請業者又は自主施工者は、遅滞なく、事前調査結果を都道府県等に報告する必要があります。
報告の対象は、以下の通りです。
報告は、電子システム「石綿事前調査結果報告システム」から可能です。
レベル1、レベル2の除去作業において、隔離等を行わず吹付け石綿等の作業を行った場合に対する直接罰が定められています。
3月以下の懲役又は30万円以下の罰金となります。
2023年10月1日以降は、事前調査を行うために必要な知識を有する者に行わせる必要があります。
一般建築物石綿含有建材調査者、特定建築物石綿含有建材調査者、これらの者と同等以上の能力を有すると認められる者など
2022年4月1日からは、大気汚染防止法の改正で、アスベスト工事の事前調査結果の報告が必要となりました。
事前調査の結果を報告しない場合は、罰則規定があるため、解体等工事の元請業者又は自主施工者は注意が必要です。