問題点は?衆院委で可決した「土地規制法案」について解説

2021.05.31

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「土地利用規制法案」が衆議院内閣委員会で自民、公明、日本維新の会、国民民主党の賛成多数で可決されました。
今後は衆院本会議で可決し、参院に送付する方針です。

一方、立憲民主党は質疑が十分尽くされていないとして、採決に反対しています。

この「土地利用規制法案」は審議入りされていますが、どのような問題点があるのでしょうか?ここでは、土地規制法案の内容や問題点、各政党の意見などを解説します。

そもそも土地規制法案とは?

安全保障上重要な施設周辺の土地利用を規制する法案です。自衛隊、海上保安庁などの施設や原子力発電所など、重要なインフラを日本から敵対的な国家や勢力から守るための法律と言えるでしょう。

過去には、2013年に長崎県対馬市で韓国人が自衛隊施設の隣接地を購入していたことが報告されています。
また、2014年には、北海道千歳市で苫小牧市内の森林が中国資本に購入されたことも報告されています。

政府は、敷地内への侵入や、スパイ行為、破壊工作、妨害などを警戒しています。

土地規制法案の内容

「注視区域」について

自衛隊の施設、海上保安庁の施設、国境離島など、安全保障上重要な土地の周囲おおむね1キロを政府が「注視区域」に指定します。
不動産登記簿や住民基本台帳などといった行政機関が持つ情報を分析、調査することができる。
例えば、土地・建物の所有者や賃借人らを調査することができます。

「特別注視区域」について

特に重要な自衛隊司令部周辺や領海の起点となる無人国境離島周辺は「特別注視区域」に指定します。
一定規模以上の土地・建物の新たな売買に氏名、国籍、住所、利用目的などの事前届け出を義務付けます。

例えば、200平方メートル以上の土地、建物の取引について、事前届け出を義務付けます。

「特別注視区域」については、宅地建物取引業法の重要事項説明の対象としています。
「注視区域」や「特別注視区域」の影響で不動産価格が下落した場合について、政府の補償はないとしています。(5月26日の衆院内閣委員会・天河次長の答弁)

土地買収規制調査の主な対象

“要件に該当する離島約570のうち、領海や排他的経済水域(EEZ)の基準となる低潮線を持つ島は484に上る、この中で土地取引が行われる可能性がある私有地のある島は沖縄本島などを含め98で、うち39は無人島となっています。”
(出典:土地買収規制調査、98離島を対象|産経ニュース<独自>

調査には、個人情報の保護に配慮した「必要最小限」の措置にとどめることが義務付けられています。
具体的な内容は後から「政令」で定めることができます。

中止命令に従わない場合は「罰則」が科されます

阻害する行為を規制する対象は「施設機能」や「離島機能」です。

違法な電波の発信、ライフラインへの妨害準備など、機能を阻害する明白おそれがある場合には、勧告・中止命令ができます。中止命令に従わなければ、2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金が処せられます。

加藤官房長官は記者会見で「安全保障の観点から、防衛関係施設の機能を阻害する行為を防止するため重要な法案」と述べています。<>br / しかし、野党からは調査範囲や対象区域があいまいであると指摘されています。島の中のどの範囲を指定するのかが、今後の課題となっています。

一方、私権の制限につながるとの慎重論が与党内からも出ています。
政府は対象の施設や阻害行為の具体例などは、法成立後に閣議決定する基本方針で定める予定です。

今後は、この法案を今国会で成立させて、令和4年から施行を目指しています。

土地規制法案について起きている与党内調整とは?

法案の閣議決定前に与党調整で公明党の主張に一部譲歩することが起きています。
与党調整で沖縄本島や東京の防衛省の本省周辺は除外する方向になっていると報じられています。
区域指定を定める基本方針について、経済的社会的観点から留意する事項を含むという修正がされていて、市街地の一部が除外される可能性があると懸念されています。

防衛省の敷地内は、地対空誘導弾パトリオット3、沖縄県石垣島には、尖閣諸島を守る海保の専従部隊の施設、これらを守ることができなくなるのではという懸念もあります。

土地規制法案の問題点はどこにあるのか?

「機能を阻害する行為」の範囲が明確ではない

施設機能や離島機能が規制対象とされていますが、法案では「防衛関係施設の我が国を防衛するための基盤としての機能」、「有人国境離島地域離島の領海等の保全に関する活動の拠点としての機能」と抽象的に規定され、具体的な内容が書かれていないことが危惧されています。

拡大解釈されると、経済活動などが不当に制限される恐れがあると指摘されています。

「調査範囲」があいまいになっている

思想・信条、交友関係、海外渡航歴などの、個人情報の収集が広範囲にわたるおそれがあり、野党側からも反対意見が強まっています。
これに対し、政府は「思想信条にかかる情報収集は想定していない」としています。

土地規制法案・各政党の意見

・公明党は過度な私権制限と経済活動への懸念を指摘、法案の大切な部分を骨抜きになるのではないかと懸念されている。
・社民党は、「調査」の対象が際限なく広がるおそれがある、離島においても立法事実を立証していないなどと指摘しています。
社民党・党首の福島瑞穂氏は、官邸前でスピーチを行い「この法案はすかすかです。何が対象なのか、どういう調査をするのか?何が機能を阻害する明白なおそれがある行為なのか一切書いていない、明白な機能を阻害する明白なおそれというためには、徹底的な調査をすることになってしまう、1キロの人たちに調査をするのはおかしい、とんでもない監視社会となります」などと強く反対しました。
・立憲民主党・今井雅人筆頭理事は「議論が十分に尽くされていない中で、与党と委員長に強行採決をされて、われわれは本当に憤っている」などと批判しました。

沖縄弁護士会は「基本的人権を侵害する恐れが極めて大きい」などと反対

全国の弁護士会で、土地規制法案に反対声明を出したのは初めてです。

アメリカの土地規制について

一方、アメリカの土地規制は、外個人の土地取得を原則自由とされていますが、外国人の取引全般に大統領が安全保障上の取引停止・禁止権限があります。

日本の法務省は、WTO協定では外国人であるといった理由で土地取得を一律に制限することは難しいという見解があります。外国人土地法(大正14年で)は、戦後にこの法律に基づく政令が一度も制定されていません。

まとめ

不動産の入口ここでは「土地規制法案」はどのような内容なのか、どこに問題があるのか、各政党の反応などを解説しました。反対意見も多い同法案ですが、機能を阻害する行為や調査対象が明確でないとした問題点、私権制限の不安など、会期末が迫っている中で今後どのように議論されるのかが注目されています。

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