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金融所得課税の見直しで話題…課税強化は不動産業界にも影響するのか?

岸田文雄首相は、2021年10月に金融所得課税の見直しを検討する意向を示しました。
金融所得課税とは、預金では利子、株式では配当などに対して課される税金を指します。

岸田首相の金融所得課税見直しの概要

税率は、基本的に一律20%(所得税15%、住民税5%)となっています。
岸田首相は、金融所得課税の見直しの内容として「成長と分配の好循環」や「1億円の壁」などに言及していました。

成長と分配の好循環

首相官邸ホームページによると、成長戦略では科学技術・イノベーション、「デジタル田園都市国家構想」などによる地方活性化、カーボンニュートラルの実現、カーボンニュートラルの実現、経済安全保障が掲げられています。

分配戦略は、所得の向上につながる「賃上げ」、「人への投資」の抜本強化、未来を担う次世代の「中間層の維持」です。

(参考:首相官邸「02. 未来を切り拓く「新しい資本主義」-成長と分配の好循環-

「1億円の壁」

令和元年 東京都税制調査会の申告納税者の所得税負担率によると、所得1億円では28.5%となり、所得税負担率が増えています。
しかし所得1億円以上の所得税負担率は27.7%、24.5%、23.2%と、所得が上がれば上がるほど、徐々に下がっているのです。

(参考:令和元年度東京都税制調査会「申告納税者の所得税負担率」

この現状を「1億円の壁」と呼ばれています。
また、岸田首相は「新しい資本主義実現会議」を​​新設し、議論を進める考えを示していました。

新しい資本主義とは、​​​​1つは、新自由主義からの脱却です。
岸田首相は「1980年代以降、格差や貧困の拡大、気候変動問題の深刻化などの弊害も顕著になってきた」などと話していました。

もう1つは、分配問題の重視です。
富裕層の金融所得から貧困層へ分配しようという提案です。

2021年11月の緊急提言では、分配の柱として「従業員に賃金の形で分配してはじめて、消費が拡大し、消費拡大によって需要が拡大すれば、企業収益が更に向上し、成長につながる」と賃金アップにつても述べています。

ところが、新しい資本主義などの税制改革は、株式市場などへの影響を考慮し慎重な姿勢に転じています。
岸田首相は「1980年代以降、格差や貧困の拡大、気候変動問題の深刻化などの弊害も顕著になってきた」などと話していました。

金融所得による格差

岸田首相が掲げる金融所得課税の見直しの背景には、金融所得による格差が要因の一つとしてあげられます。
総務省統計局「2019年全国家計構造調査 年間収入・資産分布等に関する結果 結果の概要」によると、可処分所得のジニ係数は1999年は0.273で、2019年には0.274となり、20年間ほぼ格差が広がっていません。

(参考:​​​​​​総務省統計局「2019年全国家計構造調査 年間収入・資産分布等に関する結果 結果の概要」

その一方で、同調査の金融資産残高ジニ係数によると、1994年は0.538に対し、2019年には0.640に上昇しています。

課税強化による不動産業界の影響について

不動産などの資産は、親から相続される場合も多く、格差の固定化が懸念されています。
また、金融所得課税の強化は、相続税や贈与税、不動産所得にも影響することが予想されるでしょう。

現在、不動産を相続した際に基礎控除の額を超えると相続税の申告が必要になります。
基礎控除は、以下の計算式で算出します。

(3,000万円+600万円×法定相続人の数)

相続税の申告が必要であるかどうかは、不動産の相続税評価額を算出する必要があります。
相続税評価額の算定方法は、路線価方式・倍率方式の2種類です。

路線価方式

路線価は、​​国税庁が定めた道路に面する土地1㎡あたりの評価額です。
相続税や贈与税の計算の基礎となります。
路線価に基づく土地の評価方法が​​路線価方式です。

路線価方式の計算式は、以下の通りです。
路線価×奥行価格補正率×地積

路線価は、国税庁のホームページ「路線価図・評価倍率表」で確認することができます。

倍率方式

路線価が設定されていない、固定資産税評価額に対し国税庁が定めた倍率をかけて算出する方式です。
国税庁のホームページ「路線価・評価倍率表」で倍率を確認することができます。

その他の方法として、不動産鑑定士による鑑定評価を依頼する方法があります。
一方、個人から個人に不動産が贈与された場合に贈与税が課されます。
贈与税は、1年間に受けた贈与の合計額110万円を超えた場合に発生します。

法人から個人への贈与は、贈与税がかかりませんが、受贈者には所得税および住民税が課されます。

マンションの遺産相続を巡る最高裁判決

最近では、マンションの遺産相続を巡り、路線価などに基づき算定した不動産評価が実勢価格より低すぎるとして追徴課税した国税当局の処分の妥当性が争われた訴訟で、最高裁第3小法廷は国税当局の処分を適法とし、相続人側の上告を棄却しました。

訴訟に至った経緯

問題となったのは、東京都杉並区と神奈川県川崎市にある2棟のマンションです。
男性が​​2009年に計13億8700万円で購入、子供らが2012年に相続、子供らは、路線価を基づき2棟の価格を計約3億3370万円と評価しました。

しかし、購入時の借入金などを相殺し、相続税額は0円としています。
相続税額について最高裁第3小法廷は「他の納税者との間に看過しがたい不均衡が生じ、租税負担の公平に反する」として例外規定の適用を認め、相続人側の主張を退け、​​約3億3000万円を追徴課税しました。

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