相続税対策を検討する際の一つの方法として「生前贈与」があります。
現金や預貯金は比較的容易に生前贈与できますが、不動産についてはさまざまな問題が発生するケースもあるのです。
そこで今回は、生前贈与の仕組みや不動産を生前贈与するメリット・デメリットについて解説します。
生前贈与とは、生きている間に財産を贈与することです。贈与する人は「贈与者」、受け取る人は「受贈者」となります。
不動産の生前贈与は、贈与者が所有している不動産を受贈者に無償で贈ることです。
生前贈与の際は、贈与税が課税されますが将来発生する相続税を抑えられる特徴があります。
贈与税の課税方式には「暦年課税」と「相続時精算課税」があります。
暦年課税は、受贈者が1月1日~12月31日までの1年間に受け取った財産の合計が110万円を超えた分に対して贈与税が課税される制度です。
相続時精算課税は、60歳以上の父母または祖父母から18歳以上の子・孫への生前贈与について、子・孫の選択により利用できる制度です。
贈与税の申告書とともに相続時精算課税選択届出書を提出すると、計2,500万円までの贈与が非課税となります。
相続では、法定相続人または遺産分割協議で、どのくらいの割合で分けるのか決まるため、特定の人に多く譲ることはできません。
しかし、贈与であれば、贈与者が譲りたい相手に生きている間であればいつでも譲ることができるのです。
相続税は、相続時の財産に対し課税されるので相続税をあらかじめ減らすことができません。
贈与であれば、相続時の財産を減らすことが可能です。
不動産を譲る場合は、将来値上がる前に生前贈与すると、値上がりした後に相続税を納めるよりも税金の負担を抑えられます。
60歳以上の親から18歳以上の子への贈与は相続時精算課税制度を利用できるので、2,500万円控除の適用を受けられる場合があります。
たとえば、60歳以上の母から18歳以上の子どもへ2,100万円贈与した場合、贈与税は0円です。
夫婦間の贈与では、配偶者控除を受けられる場合があります。
居住用不動産の配偶者控除は、婚姻期間が20年以上の夫婦間で居住用不動産またはその購入資金の贈与があった場合、基礎控除額110万円に加え、最高2,000万円まで控除できる制度です。
2022年(令和4年)1月1日から2023年(令和5年)12月31日まで、直系尊属から現金で贈与を受け、新築や購入や増改築などを行う際に、一定の要件を満たすと資金の一部が非課税になる特例制度です。
直系尊属とは、父母または祖父母のことです。
(参考:国税庁「No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」)
不動産を取得した際に発生する不動産取得税や登録免許税の税率が相続税よりも高めに設定されているので、割高になります。
不動産取得税 | 登録免許税 | |
生前贈与 |
土地・建物:3% 住宅ではない建物:4% |
2% |
相続 | なし | 0.4% |
3年以内に贈与者が亡くなった場合は、生前に贈与されたものに対し相続財産に加算されます。
小規模宅地等の特例は、亡くなった人が自宅として使用していた土地を同居していた親族が相続した場合に評価額を最大80%減額できる制度です。
相続時課税制度を利用する場合や贈与後3年以内に贈与者が亡くなった場合は、小規模宅地等の特例が利用できません。