マンションを長持ちさせるためには、定期的なメンテナンスや一定の時期に大規模修繕が不可欠です。
しかし、区分所有者で構成される管理組合の中には、大規模修繕の時期や必要な費用について詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、大規模修繕工事の内容や周期、大規模修繕工事にかかる費用などについて解説します。
計画修繕工事のうち、建物の全体または複数の主要構造部について、劣化を防ぐことを目的にして行われる工事です。
国土交通省が公開している「長期修繕計画作成ガイドライン」では、大規模修繕工事について「マンションの快適な居住環境を確保し、資産価値を維持するために行う修繕工事や、必要に応じて建物及び設備の性能向上を図るために行う改修工事のうち、工事内容が大規模、工事費が高額、工事期間が長期間にわたるもの等をいう」と記載されています。
大規模修繕工事は、屋上防水や外壁塗装、鉄部塗装、シーリング工事、タイル補修、コンクリート補修、給排水管の補修など、マンションの共用部分を中心に実施します。
その他、バリアフリー化や宅配ボックスの設置、セキュリティー強化、オートロックシステムの更新など、快適性向上のため、建築時はなかった改修工事も実施する場合があります。
マンションの大規模修繕は、12年程度の周期で行われることが一般的です。
「長期修繕計画作成ガイドライン」は、2021年(令和3年)9月に改定されました。
計画期間について「中古・新築マンションともに30年以上、かつ大規模修繕工事が2回含まれる期間以上とする」と記載されています。
しかし、すべての設備を12年程度の周期で交換するわけではありません。
例えば、ベランダバルコニーは12年、エレベーターは30年が修繕目安となっているため、1回目の大規模修繕工事でベランダバルコニーを修繕し、2回目または3回目でエレベーターを修繕するのが一般的です。
また、工事箇所別の修繕周期の目安は、外壁塗装の塗替えが12年から12~15年、空調・換気設備の取換は、15年から13〜17年へ変更となっています。
近年は、大規模修繕工事の周期を 12年から最大18 年に延長できるサービスも登場しています。
一般的には、専門委員会(修繕委員会)を設立します。
施工会社とは別にコンサルタント会社に設計や見積りの精査、施工監理を依頼する「設計監理方式」と調査から工事までのすべてを1つの会社に任せる「責任施工方式」があります。
建物の劣化状況や設備の特性などを把握するため、目視や機械調査を並行して行います。
工事の実施する時期や工事内容など、修繕計画と予算を立てます。
複数の会社から相見積もりを取ります。施工実績や財務状況など、総合的に判断します。
工事内容や目的、スケジュール、費用など、組合員の承認を得ることを目的に決議します。
施工会社との工事請負契約を結び、着工の1ヵ月程度前に説明会を開催します。
施工会社との打ち合わせを定期的に行い、居住者の意見・要望を共有し、生活環境にも配慮しながら進めます。
竣工検査に問題がなければ、竣工・引渡しとなります。
竣工後も定期的な点検とメンテナンスは必要です。
大規模修繕工事の期間は、計画を立ててから2~3年程度かかります。
ただし、規模や工事内容にも異なります。
大規模修繕工事の費用は、建物の大きさや工事内容によっても異なります。
国土交通省「 2017年(平成29年)マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、大規模修繕工事の金額は1戸あたり75万円〜100万円は30.6%、1戸あたり100万円〜125万円は24.7%、1戸あたり50万円〜75万円は13.8%となっています。
また、大規模修繕工事の金額は1㎡あたり10,000円〜15,000円は41.1%、1㎡あたり5,000円〜10,000円は31.8%、1㎡あたり15,000円〜20,000円は10.0%です。
(参考:国土交通省「 2017年(平成29年)マンション大規模修繕工事に関する実態調査」)