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改正内容と今後の影響は?相続登記の義務化について解説

2021年4月に「相続登記の義務化」に関する法案が国会で可決・成立しました。
2024年を目途に施行を予定しています。

これまでの相続登記は、義務ではなく、任意で行うことが一般的でした。
しかし、所有者のわからない未登記の土地が土地取引の妨げになっていたケースもあります。

そこで今回は、相続登記の申請義務化の背景や目的、所有者不明土地の問題点、改正案の主なポイント、相続登記の申請義務化のメリットなどを解説します。

相続登記の申請義務化の背景

法制審議会民法・不動産登記法部会第26回会議において「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案」を決定しました。

(参考:法務省「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案」

具体的には「民法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第24号)及び「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(令和3年法律第25号)が可決・成立しました。

この要綱案で注目すべき点は「相続登記」や「氏名又は名称及び住所の変更登記」です。
所有者不明土地の対策として相続登記の義務化、所有者の氏名又は名称及び住所に変更があった場合の「変更登記」について罰則が制定されます。

相続登記義務化の目的

所有者不明土地の問題解決として相続登記の義務化が予定されています。

そもそも所有者不明土地とは?

不動産登記簿等の所有者台帳等で所有者が直ちに判明しない、または判明しても連絡がつかない土地のことを言います。
人口減少・高齢化で所有者不明土地が全国的に増加しています。
これまで、土地の所有者の探索に多大な時間や労力、費用などかかるといった課題がありました。

このような課題に対し不動産登記法の特例である「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」が令和元年6月1日に全面施行されました。

登記名義人の死亡後、法定相続人を探した上で、職権により長期間相続登記がされていない土地として​​​​登記に付記し、登記手続を促すといった目的で設けられました。

所有者不明土地の問題点

公共工事や都市開発の妨げになる

登記簿上の所有者が亡くなっていたり、連絡が取れないケースなどで、未登記の土地があれば、公共工事や都市開発の妨げになってしまいます。

災害対策の工事が進められない

地震や豪雨など、災害復旧のための災害対策工事が進められないなど、​​工事の遅延が課題になっています。

大量のゴミや不法投棄の問題

未登記の土地に​​ゴミが大量に放置され、加えてテレビや洗濯機などが不法投棄されているなど、ゴミ屋敷の状態になっている場所も存在します。
しかし、土地の所有者がわからないため勝手に立ち入ることができません。

国土交通省「平成30年土地白書」によると、不動産の相続登記が約66.7%、住所変更登記がされないことが約32.4%に上っています。

(参考:国土交通省「平成30年土地白書」

2040年​​の所有者不明土地は、約720万ha(北海道本島の面積に迫る水準)に増加すると予測されています。
現行法では、相続登記が義務ではないため、未登記の土地が長期間放置されているケースも多くなっています。

改正案の主なポイント

1.相続登記の義務化と罰則の制定

不動産登記法改正として、相続人が不動産の取得を知ってから3年以内に登記申請することを義務化し、違反者すると10万円以下の過料に処されます。
過料は、罰金や科料とは異なり前科はつきません。

1-1.​​相続人申告登記の新設

相続人間で遺産分割協議がまとまらないなど、期限内に登記を行えないような場合に相続人が登記名義人の法定相続人である旨を申し出る制度が新設されます。
期間内に申請すれば過料は免れます。

ただし、その後に遺産分割が行われ、不動産を取得したときは、遺産分割の日から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。

2.氏名又は名称及び住所の変更登記の義務化と罰則の制定

個人や法人の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があったときは、変更があった日から2年以内に変更の登記を申請しなければなりません。
違反すると5万円以下の過料に処されます。

3.法務局による所有者情報取得の仕組み制定

法務局が、住民基本台帳ネットワークシステムまたは商業・法人登記システムから所有者の氏名又は名称及び住所の変更が分かるように、職権で変更登記できる仕組みです。
これにより、個人が不動産登記をする際に生年月日などの情報を法務局に提供しなければなりません。

ただし、生年月日は登記簿に記載されません。法人の場合は、会社法人番号等が登記簿に記載されます。

4.土地の所有権を国庫に帰属させる制度

相続や遺贈などで土地を取得した場合に、所有権を放棄して土地を国庫に帰属させることが可能になる制度です。
現行法上では、土地のみを相続放棄することができません。

相続は基本的にプラスとマイナスのどちらの財産も相続します。
しかし、まとめて相続放棄が可能であってもマイナスの財産だけ相続放棄することができません。

今回の制度で実質土地のみを相続放棄することが可能になります。

相続登記の義務化によるメリット

土地トラブルの減少が期待できる

所有者不明土地が長期間放置されると、​​大量のゴミや不法投棄などによる治安悪化の原因にもなります。
また、公共工事がすぐに着手できないケースもあるので、相続登記が義務化されれば土地の所有者が明らかになり、迅速な対応が期待できます。

土地取引が活発化する

相続登記の義務化でこれまで放置されていた土地の所有者が明らかになるので、土地の売買や賃貸が活発化されることが予想されます。
また、土地上に建物を建てるなどの有効活用も期待できます。

相続登記の義務化は、法改正前の未登記不動産についても適用があります。

まとめ

2021年4月に所有者不明土地の問題解決として相続登記の義務化がに関する法案が国会で可決・成立しました。
改正ポイントとしては以下の通りです。​​

  • 相続登記の義務化と罰則の制定、​
  • 相続人申告登記の新設
  • 氏名又は名称及び住所の変更登記の義務化と罰則の制定
  • 法務局による所有者情報取得の仕組みの制定
  • 土地の所有権を国庫に帰属させる制度

相続登記の義務化により、土地取引が活発化したり、土地トラブルの減少が期待できます。

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