賃貸物件で入居者が室内で死亡していたというニュースを見かけます。
近年、過去最高となる超高齢化社会となり「孤独死」の増加が社会問題となっています。
このようにある日突然、室内で住人が死亡していた場合、オーナーはどのように対応すればよいのでしょうか?
今回は、遺体発見後の流れや入居者の死亡でオーナーが取るべき対応、入居者死亡後の原状回復費用などについて解説します。
近年、高齢者の孤独死が増加しています。データとともに見ていきましょう。
内閣府の平成30年版高齢社会白書によると、東京23区内における一人暮らしで65歳以上の自宅での死亡者数は、平成28(2016)年では3,179人となっています。
(参考:内閣府「平成30年版高齢社会白書」)
一方、大阪府警の調査では、死後2日以上経過して発見されたケースは2,996人にのぼります。また、1カ月以上たって見つかった遺体が382体となっています。
(参考:大阪府警調査)
最近では、新型コロナウイルス感染拡大で自粛期間の影響もあり、自宅で孤独死するケースも増えています。
これを受け、政府は内閣府に「孤独・孤立対策担当室」を新たに設置しました。
孤独・孤立対策担当相は、対策として高齢者や子どもへの見守りや住まいのサポートなどを挙げています。
ここでは、入居者が室内で亡くなっていた場合の流れを解説します。
異変に気付いた入居者等が管理会社に連絡をして発覚するケースが多いです。
オーナーや管理会社が入居者が在宅しているかどうか、反応するかどうかインターホンでチェックしながら、電気メーターなども確認します。
オーナーが入居者の連帯保証人や家族へ連絡します。明らかに亡くなっていた場合はすぐに警察へ連絡します。亡くなっているかわからない場合は救急車を呼びます。到着すると、救急隊員が生死を確認します。
鍵の開錠ができない場合は、あらかじめ業者に連絡します。鍵の開錠後、警察が事件性の有無などの確認のため入室します。
警察による現場検証、実況見分を行います。
検視や検案が必要となった場合、警察が遺体を引き取ることとなります。
入居者の自殺や孤独死があった際は、オーナーはどのような対応を取るべきでしょうか。それぞれの対応を解説します。
家賃滞納の督促など連絡しても反応がなく、数日間連絡が取れないとき場合は、最悪の事態を想定し、早めに入居者の家族や連帯保証人へ連絡しましょう。
遺体発見から数日が経過しているということも少なくありません。すでに、ハエやウジの大量発生で異臭が発生していることもあります。
発見が遅れると清掃のみでは終わらず、壁や床の張り替えを行わなければなりません。場合によっては、専門の業者に特殊清掃を依頼したり、リフォームなども必要となり費用が高額になるケースもあります。
連絡に対してオーナーが放置していると、なんらかの被害が生じた隣室や下階などから管理責任を問われる可能性があります。
室内で入居者が死亡していたときは、勝手に室内に入れないということです。単独で入ってしまうと、第一発見者として取り調べを受ける可能性があります。
まずは警察に連絡をしてから事情を説明した上で、立ち会ってほしい旨を伝えましょう。
借主の死亡すると、賃貸借契約は民法896条に基づき法定相続人に相続されます。
民法896条には、以下の内容が規定されています。
「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。」
ただし、法定相続人は1人ではないケースが多くあります。
この場合は、すべての相続人の同意と署名捺印が必要となります。
契約の解除は、相続人から解約通知書を提出しなければなりません。
一方、公営住宅の入居者が死亡した場合、相続人は、当然に承継するものではないという判例があります。(最判平2.10.18)
室内に異臭や汚れが残ってしまった場合は、近隣から苦情がくる可能性もあります。
できるだけ早く対処するとともに、かかった費用は原状回復費用として連帯保証人や相続人に請求することとなります。
それぞれの費用を解説します。
入居者が死亡した後に残された家財道具など、残置物の処理を行います。
勝手に処分するとトラブルの原因にもなるので、連帯保証人や相続人に確認してもらいましょう。
遺体の腐敗や異臭で特殊清掃を依頼しなければならないケースや床材やクロス等の張り替えを行う可能性があるので、それらの費用も連帯保証人や相続に請求することとなります。
未払いの家賃がある場合は、連帯保証人や相続人に支払いを請求します。
入居者の死亡により新たな借主が決まらず、空室が続く場合や家賃を減額せざるを得なくなったときは、死亡原因などにより相続人に損害賠償の請求をできる可能性があります。
しかし、どのようなケースで損害賠償をできるかどうかの判断はケースバイケースです。
まずは、弁護士等の法律の専門家に相談するのもひとつです。
これらの費用は、火災保険の特約で原状回復費用に充てることができる場合もあるので、一度確認してみましょう。
相続人がいない場合は、弁護士、司法書士等に相談し、家庭裁判所への申し立てにより相続財産管理人を選任してもらうこととなります。
ここでは、遺体発見後の流れや入居者の死亡でオーナーが取るべき対応、原状回復費用などについて解説しました。
オーナーが落ち着いて対応できように、あらかじめ遺体発見からの流れや対応などを理解しておくことが大切です。
原状回復費用や損害賠償請求等でわからないことがあれば、法律の専門家である弁護士などに相談するのもひとつです。