日本全国で増え続ける空き家。その数は2023年時点で約900万戸に達し、総住宅数の7戸に1戸が空き家という状況になっています。少子高齢化や都市部への人口集中が背景にありますが、2025年の今、空き家は「放置される不良資産」から「収益を生む資産」へと再定義されつつあります。
特に注目されているのが、自治体が主導する空き家利活用の仕組みです。補助金やマッチング制度を活用すれば、個人でも空き家を有効に活かして副収入を得られる可能性が広がっています。単なるリフォームや売却ではなく、賃貸や民泊、地域拠点としての利活用まで、多彩な選択肢が提示されているのです。
空き家対策は国の政策としても優先度が高く、2015年に「空き家対策特別措置法」が施行されて以降、各自治体が積極的に取り組みを進めています。空き家は放置されることで景観や治安の悪化、さらには倒壊の危険性まで生じるため、地域にとって大きなマイナスです。
そのため2025年現在、多くの自治体が「空き家を流通に乗せること」や「利用希望者と所有者をつなぐこと」を目的とした独自の制度を拡充しています。単なる規制や指導ではなく、「貸し出して活用する」ことを後押しする方向にシフトしている点が大きな特徴です。
最も広く普及している仕組みが「空き家バンク」です。これは自治体が所有者から物件情報を集め、借りたい人や買いたい人に公開する仕組みで、近年は民間プラットフォームと連携するケースも増えています。
例えば、首都圏からの移住希望者が地方の空き家を探す場合、空き家バンクを利用すれば安価に良質な物件を見つけられることがあります。さらに、リフォーム前提で貸し出すケースや、一定の条件で自治体が改修費を補助する制度もあり、「使える状態に戻して貸す」ための後押しが充実してきています。
AIによるマッチングも導入されており、家の立地や条件、利用希望者のライフスタイルに合わせた最適なマッチングが可能になっています。これにより、従来はなかなか借り手がつかなかった物件にも新たなチャンスが生まれているのです。

2025年に入って特に目立つのが、自治体による補助金・助成金制度の拡充です。
代表的なものとしては、
などがあります。
これらを活用すれば、個人オーナーでも初期費用の負担を抑えて空き家を収益化することが可能です。特に民泊や短期賃貸はインバウンド需要の回復と相まって人気が高まっており、自治体が観光振興の一環として支援するケースも増えています。
実際に貸し出して収益を得ている事例を見てみましょう。地方都市の一軒家をリフォームして若い移住者に長期賃貸として提供したケースでは、空き家所有者が安定した家賃収入を得ながら、地域に新しい住民を呼び込むことに成功しました。
また、古民家をカフェやアトリエとして短期的に貸し出す事例もあります。空き家が新しいビジネスの拠点となり、所有者に収入が入るだけでなく地域経済にも貢献するという好循環が生まれています。
特にインバウンド需要の回復が見込まれる2025年において、空き家を民泊や短期賃貸として活用する動きはますます活発化しています。都市部だけでなく地方観光地や歴史的建造物が残る地域では、空き家をリノベーションして宿泊施設にする動きが顕著です。
さらに、複数人で利用する「シェアハウス」や、期間限定で地域に滞在する人向けの「定額住み放題サービス」といった形も広がっています。これらは従来の賃貸とは異なり、柔軟な契約形態や短期利用に対応できるため、新しいライフスタイルにマッチした仕組みといえます。
一方で、空き家を貸し出す際には注意すべき点もあります。
建物の老朽化や耐震性能の不足、火災保険の未加入などが典型例です。特に老朽物件を貸し出す場合には、法的な安全基準を満たす必要があり、改修コストがかかる可能性があります。
また、民泊として運営する場合は地域の条例や管理規約による制限があるケースも多く、事前確認が欠かせません。トラブルを避けるためには、行政窓口や専門家に相談しながら進めることが重要です。

2025年の空き家対策は、所有者にとって「負担を減らすための処分」から「地域とつながりながら稼ぐための資産活用」へと進化しています。自治体の制度や補助金を活用することで、個人でもリスクを抑えながら収益化できるチャンスが広がっています。
これからは、空き家を放置するのではなく「どう貸し出し、どう地域に役立てるか」が問われる時代です。所有している空き家を眠らせておくのではなく、一歩踏み出して活用を検討することが、未来への資産形成につながっていくでしょう。
