不動産選びにおいて、これまでは「駅近」が絶対的な価値基準として語られてきました。駅から徒歩5分以内であれば資産価値が高い、賃貸需要も途切れない。そんな定説が長く続いてきました。
ところが、2025年現在、この常識に揺らぎが生じています。
テレワークの普及、ライフスタイルの変化、そして住宅価格の高騰……こうした要因が複雑に絡み合い、「駅から遠くても、良い物件であれば住みたい」と考える人が増えているのです。そこで今回は郊外物件に隠された価値について掘り下げます。
最大ともいえる魅力は、都心に比べて圧倒的に広い住空間を確保できる点です。
駅から離れた郊外物件は同じ予算でもリビングがひと回り広かったり、個室を複数確保できたりと、生活に余裕をもたらしてくれます。
特にファミリー世帯にとっては、子どもの遊ぶスペースや在宅勤務用のワークルームを設けられることが大きな利点です。都心では叶わなかった「リビング+書斎+子ども部屋」といった理想の間取りも、郊外なら現実的な選択肢になります。
また、庭付き一戸建てや駐車場付きの賃貸物件が手に入るのも郊外ならでは。車移動を前提にすれば駅から多少離れていても不便さを感じにくく、逆に豊かな生活を楽しめるケースが増えているのです。
郊外物件のもう一つの価値は、落ち着いた住環境にあります。
駅近エリアは便利な一方で、交通量や人通りが多く、騒音やプライバシーの確保に悩まされることも少なくありません。その点、郊外では静かな住宅街や自然豊かなエリアが多く、生活の質を高めてくれる要素が揃っています。公園や緑地が近くにある物件も多いため、子育て世代や健康志向の高い人々から支持を得ています。
また、空気のきれいさや夜の静けさといった「目に見えない快適さ」も無視できません。毎日を暮らす場所だからこそ、こうした環境要素が満足度に直結しているのです。
郊外人気を後押ししているのが、テレワークの普及です。かつては「通勤時間をいかに短くするか」が物件選びの大前提でした。しかし、週に数日の出社で済む人が増えたことで、通勤の負担は相対的に小さくなっています。
「毎日ドアツードアで1時間以内」という条件にこだわらず、週に数回の通勤なら少々遠くても構わない。むしろ、それ以上に広さや住環境を優先したい。そんな意識の変化が、駅から離れた郊外物件に追い風を吹かせているのです。
一方で、完全リモートワークを前提に「職場との距離を気にしない」という選び方をする層も増加しています。交通利便性の価値が相対的に下がり、住環境や暮らしやすさが主役になりつつあるのです。

郊外物件は、コスト面でも大きな魅力を持っています。都心のマンション価格や家賃は年々高騰を続けており、若年層や子育て世代にとって大きな負担となっています。
その点、郊外エリアの物件は同じ広さでも価格が抑えられ、ローンや家賃の負担を軽減できます。これにより、生活費に余裕を持たせたり、将来に向けた貯蓄や投資に回すことができるようになるのです。
さらに、郊外エリアの物件は将来的な資産価値の下落を懸念する声もありますが、近年はインフラ整備や都市再開発が進み、利便性が向上するケースも見られます。選び方次第では、価格の割に資産性が高い物件を手に入れることも可能です。
最近では、郊外物件に最新の設備や工夫を取り入れる動きも広がっています。太陽光発電や蓄電池、断熱性の高い建材を採用したエコ住宅は、環境意識の高まりと相まって注目を集めています。
また、シェアハウスやコワーキングスペースを備えた集合住宅など、「住む+働く+交流する」を実現する新しい形態の郊外物件も登場しています。単なる“安い広い”にとどまらず、ライフスタイルを支える場所として進化しているのです。
最も大きいのは交通の便です。バス便が主流になるエリアでは、天候や時間帯によって不便さを感じることもあるでしょう。
また、スーパーや病院といった生活インフラが充実しているかどうかも重要なチェックポイントです。駅から離れていても、日常の買い物や通院が便利であればストレスは少なく済みます。
さらに、将来的な人口動態や地域の開発計画を確認しておくことも大切です。少子高齢化で空き家が増える地域では資産価値が下がりやすいため、将来の展望を見極める目が必要になります。

2025年の今、人々の暮らし方や働き方は大きく変わり、「駅から遠くても住みたい」と考える層が着実に増えています。
広さやゆとりのある間取り、静かな住環境、経済的な負担の軽さなど、駅近では得られない「自分のライフスタイルに合った住まい」が注目を集めています。
郊外物件はその選択肢の一つとして、今後ますます存在感を増していくでしょう。
