観光立国としての日本が、再び注目を集めています。コロナ禍で一時停滞していた訪日外国人の動きが本格的に回復し、不動産市場にもその熱気が波及しています。街中のホテルは満室、観光地のテナントは争奪戦、そして富裕層による高級マンションの購入が加速——。いま、日本の不動産は再び世界の投資家たちの注目を集めているのです。
2024年の訪日外国人数は3,300万人を突破しました。
政府は2025年までに訪日消費額を5兆円、一人当たりの旅行消費額を20万円に引き上げる目標を掲げています。円安の影響もあり、訪日客は「滞在」だけでなく「住む」「買う」といった次のステップにも関心を広げています。
特に注目されているのが、中国を中心としたアジアの富裕層による日本国内の不動産購入です。東京の湾岸エリアや京都の高級住宅街では、外国人による物件取得が急増しています。ビザの取得のしやすさや教育環境、日本の治安の良さなどが魅力とされており、投資目的と実需の両面での購入が進んでいます。
2024年の不動産取引額は前年比で約20%増加し、非常に堅調な動きを見せています。中でもホテルや産業施設、オフィスビルといったインバウンド関連の物件への投資が活発化しています。大阪・関西万博や沖縄の大型テーマパーク「ジャングリア」など、新たな観光需要を見越した開発も続々と進行しています。
外国資本による投資も再び勢いを取り戻しており、アジア系ファンドを中心に日本市場への関心が高まっています。現在は大型物件を中心とした取引が目立ちますが、今後は個人投資家層にも広がる可能性があります。

インバウンド需要を活かした不動産投資を考えるうえで、次の3つの分野が注目されています。
ニセコや京都などの観光エリアでは、短期から中期の滞在を希望する外国人が増えており、ワンルームタイプの賃貸物件が人気を集めています。外国人労働者やリモートワーカーのニーズとも重なるため、安定した需要が見込まれます。
観光地の中心部や人通りの多い場所では、飲食店や物販店舗の出店ニーズが高まっています。テナント契約の際は保証金や契約期間など、リスク管理をしっかり行うことで安定的な収益が期待できます。
都心部やリゾート地におけるホテルは、訪日客の増加とともに稼働率が上昇しています。特に注目されているのが、合法的に運営されている民泊施設です。Airbnbなどのプラットフォーム経由での集客が一般化しており、観光客にとっては「暮らすように泊まれる」民泊のニーズが高まっています。
東京・大阪・京都などの一部エリアでは、住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づいた運営が進んでおり、年間180日以内の営業制限があるものの、稼働率次第では高い収益性を持ちます。また、特区民泊や旅館業法許可付き物件であれば、営業日数の制限もなく、より安定的なビジネスとして成立しやすいのが特徴です。
初期投資は比較的少額に抑えられるケースも多く、個人投資家にとっては参入しやすい領域といえるでしょう。ただし、地域によって条例や住民との共存が課題となる場合もあるため、事前の調査と適切な管理体制が不可欠です。

長らく停滞していたインバウンド需要は、今後も一過性のブームではなく、長期的かつ構造的な追い風となる可能性があります。国内需要だけに頼らず、グローバルな視点を持った投資戦略を構築することは、将来にわたる資産形成の強い土台となるでしょう。
反面、外国人オーナーの物件は、オーナーと連絡が取りづらい、賃料が急に高騰される、マンションの管理規約や自治体ルールが守られない……などのトラブルも散見されます。販売する不動産会社も、リスクとリターンのバランスを見極めて取り組むことが大切です。
