近年、アジア勢による日本への不動産投資が活発化しています。
なかでもシンガポールの政府系ファンドなどがホテルや集合住宅を相次いで取得しています。
また、シンガポールの投資ファンドQIPは、6月初旬に日本の大都市のマンションを投資対象としたファンドを組成し、大阪と名古屋の3物件を取得(取得総額4千万ドル(54億円)。
一方、円は、シンガポールドルに対し6月に1985年以来37年ぶりの安値をつけており、歴史的な円安により、日本の不動産投資信託(REIT)市場にも資金が流れ込んでいると報じられています。
このように2022年アジア勢の投資額は、3年ぶりの高水準となる可能性があります。
不動産投資信託(Real Estate Investment Trust)は、多くの投資家から集めた資金でマンションや商業施設、オフィスビルなどを購入し、得られた賃貸料収入や売買で得た利益を投資家に分配する金融商品です。
日本では、頭にJAPANのJを付けて「J-REIT」と呼ばれています。多くは金融商品取引所に上場しており、株式と同様、いつでも市場で売買が可能です。
J-REITのような上場しているREITは、クローズドエンド型が採用されており、中途解約ができません。
また、J-REIT自体は、「投資信託及び投資法人に関する法律(投信法)」に基づき設立された不動産投資法人が主体です。そのため、実質的な業務を行うことができません。
資産運用は資産運用会社に、資産保管は資産保管会社、一般事務は一般事務受託会社にそれぞれ外部委託することが義務付けられています。
通常、不動産を購入する際、2,000万円〜1億円など、多くの購入資金が必要です。
しかし、不動産投資信託では、数万円程度から購入することも可能となっています。
そのため、できるだけリスクを回避したい初心者でも始めやすいでしょう。
現物の不動産を売却する場合、登記手続きや税金、価格交渉などのコストと手間がかかります。
しかし、金融商品取引所に上場しているREITは、株式と同様に有価証券であり、流動性が高く、ご自身が好きなタイミングで売買できるところも魅力的です。
通常の不動産売却と比べ、取引手数料や譲渡益にかかる税金のみで低コストで投資が可能です。
不動産投資信託では、オフィスビルやホテル、倉庫、マンション、リゾートなど、さまざまな不動産にリスクを考慮した分散投資が可能です。
配当は、不動産の賃料から安定した配当が期待できます。
J-REITは、利益の90%超を分配するなど、一定の条件を満たすと法人税がかからず、そのまま分配金として受け取ることが可能です。
不動産投資法人は企業であるため、倒産のリスクがあります。
また、上場の基準を満たさない場合は上場廃止となります。
一方、地震や火災が発生した際、分配金が減少する可能性もあるのです。
このように不動産投資信託には元本保証がありません。
超低金利で資金調達が可能となっているため、日本の不動産が割安な投資先として注目されています。
総合不動産サービス大手JLLによると、2020年1月〜9月における東京の商業用不動産投資額が193億(約2兆円)と、世界首位になったことが明らかになっています。
3四半期を通じて東京が首位となるのは、2008年のリーマンショック以降で初めてとなりました。
東京に次いで、2位がソウル(142億ドル)、3位がロンドン(134億ドル)です。
物流施設や賃貸マンションに海外の投資マネーが流入しているということです。
(参考:JLL「JLL、2020年1-9月期世界の商業用不動産投資額を発表」)
(参考:産経新聞「東京の不動産投資額が世界首位 コロナで海外資金流入」)
最近では、西武ホールディングス(HD)のホテル・レジャー施設の売却入札に複数の外資系ファンドが参加し、シンガポール政府系のGICが1500億円規模で取得する方向となりました。