国土交通省が3月22日に発表した1月1日時点の2022年公示地価は、全国の全用途平均で前年比0.6%の上昇となりました。
東京、大阪、名古屋の三大都市圏も全用途平均が0.7%上昇しています。
(参考:国土交通省「令和4年地価公示」)
新型コロナウイルスの影響が緩和された結果となっています。
そもそも地価公示とは、国土交通省土地鑑定委員会がその年の1月1日時点における全国の標準地の土地価格を公示するものです。
公示地価とは、地価公示で公表される土地価格を指します。
取引事例比較法や収益還元法などを分析し、価格を算出します。
不動産鑑定士2名以上の鑑定評価をもとに、土地鑑定委員会が標準地1㎡あたりの土地価格を決めます。
全国約2万6000の調査地点のうち、4割強にあたる1万1175地点が上昇しています。
下落は9010地点、横ばいは5446地点です。
大都市圏は全用途平均で0.7%プラスと2年ぶりに上昇しました。
用途別では住宅地が0.5%上昇し、商業地は0.4%の上昇です。
住宅地の上昇は新型コロナウイルス感染拡大を受け、外出自粛要請に伴う住宅購入意欲の高まりが要因となっています。
東京23区のうち、20区が上昇に転じています。
上昇率で一番高い区は「NAKANOサンプラザシティ」などの再開発が進んでいる中野区です。
続いて、店舗併用マンションが多い杉並区と荒川区の上昇率が高くなっています。
住宅地は23区全体が上昇しています。
なかでも港区と目黒区は住宅需要が堅調なため、上昇率が拡大している状況です。
国交省は「住居に近接する店舗で買い物する需要から上昇に転じた」としています。
一方で、飲食店やオフィスが集まる中央区、千代田区、港区では下落となりました。
新型コロナウイルス感染拡大の影響により回復が遅れている状況が見られます。
(参考:日本経済新聞「地方圏の公示地価、2年ぶり上昇 半数が上昇・横ばいに」)
全国の最高価格は、16年連続で東京・銀座「山野楽器銀座本店」(東京都中央区銀座4)で、1㎡あたり5,300万円となっています。
また、リニア新幹線駅予定の橋本、船橋、厚木、市川などの東京近郊エリアでも公示地価が上昇傾向にあります。
共働きで高所得のパワーカップルがタワーマンションを積極的に購入していることが挙げられます。
在宅勤務が広がり、郊外の高級マンションを求める人も増えているようです。
不動産経済研究所「首都圏新築分譲マンション市場動向2021年のまとめ」によると、1億円以上で売買される「億ション」は、2760戸で前年(1818戸)比942戸51.8%の大幅な増加になっています。
また、2021新築マンションの1戸当たりの平均価格は6,260万円です。
また、総務省「令和2年労働力調査」によると、2020年のパワーカップルを含む共働き世帯は、1,621万世帯で総世帯の約3割を占めています。
(参考:総務省「令和2年労働力調査」)
このように富裕層を中心とするマンションの購入意欲は今後も続くと予想されます。
商業地では店舗併用マンション用の土地需要が高まっているため、公示地価が上昇する要因になっています。
コロナ禍の影響で近所に買い物をする人が増加し、駅周辺の商業地の地価が上昇傾向にあります。
(参考:読売新聞オンライン「公示地価上昇 新たな暮らし方を反映した」)
都市部では訪日客の回復が見込めませんが、コロナ禍で首都圏を中心にテレワークが増えるなど、住宅需要が高まっているのも要因のひとつです。
今回は、2022年の公示地価の動向について解説しました。東京圏では、23区のうち20区が上昇に転じ、新型コロナウイルスの影響が緩和された結果となっています。
その一方で、テレワークの増加により住宅需要が高まっているため、公示地価の上昇につながっています。
訪日客の回復がまだまだ見込めないですが、今後も公示地価の上昇が経済回復への期待が高まりつつあります。