新型コロナウイルスの感染拡大がオフィス賃料に大きな影響を及ぼしています。
特に緊急事態宣言下では、在宅勤務が急増し、各地でオフィス縮小や見直しを検討する企業も見られました。
そこで今回は、東京・オフィス賃貸の市場動向や東京エリアの空室率、オフィス移転のメリット・デメリットなどについて解説します。
日本経済新聞社がまとめた2021年のオフィスビル賃貸料調査によると、9月時点の東京のビル賃料水準が10年ぶりに前年同期と比べ下がったことがわかりました。
調査は、不動産仲介4社から賃料を聞き取り、1985年2月を100として指数化、21年下期(9月時点)東京の既存ビル(築後1年以上)の指数は、154.77で20年下期より4.56下がりました。
東日本大震災後の11年下期以来、10年ぶりに下回ったということです。
(参考:日本経済新聞「オフィス賃料に「在宅」の圧力 東京10年ぶり下落」)
日本全国でオフィスが一番多いのは東京都と言われています。自社ビルや賃貸ビルを本社として備えているケースもあります。
ビルディンググループが提供するオフィス情報サイト・市況データ・オフィス賃料相場情報「2021年11月度全国6大都市圏 オフィス市況調査」によると、東京エリアの空室率は7.00%(前月比▲0.05%)と18ヶ月ぶりに低下へ転じました。
推定成約賃料は、22,497円(前月比+93円)と4ヶ月連続ぶりに増加へ転じています。
(参考:ビルディンググループ「2021年11月度全国6大都市圏 オフィス市況調査」)
一方、ニッセイ基礎研究所が2021年12月7日に公開したレポートでは、オフィス賃貸市場は、東京Aクラスビルの空室率が3.3%に上昇しています。
021年7~9月累計の延べ宿泊者数はコロナ禍以前の2019年対比で▲49.0%減少です。
(参考:ニッセイ基礎研究所「不動産クォータリー・レビュー2021年第3四半期」)
コロナ禍でオフィスを見直す企業が増えています。特に緊急事態宣言下で在宅勤務が急増し、各地でオフィス縮小や地方移転を検討するケースも見られます。
オフィス移転は、企業にとってどのような影響を及ぼすのでしょうか?そのポイントを解説します。
オフィス移転を行う場合は、どのような目的であるのかを明確にすることが大切です。
例えば、コスト削減や企業のイメージアップ、業績の悪化など、さまざまな理由が挙げられます。
しかし、単にコスト削減や業績の悪化と漠然としたイメージではなく、移転先で社員のモチベーションを現在より上げるなど、社員の満足度を高められる具体的な目的が必要です。
賃料が安くても社員の交通費やクライアント先までの交通費が高くなる場合もあります。
また、一定期間の賃料が無料になるフリーレントや貸主が移転費用を一部負担するなどのサービスもあります。
このように立地と賃料を検討しながら、事前調査を行うことも大切です。
一方、ビルの需給バランスや社会経済情勢により、賃料が大きく変わるケースもあるため、移転時期にも注意しましょう。
一人当たりに必要なオフィス面積、これから社員が増えていくのか、あるいは移転と同時に人員を削減するのかなどを計画しながら、実際に使うことができる有効面積を調べておきましょう。
また、オフィス面積と同時に内装、レイアウトなどのイメージもできる限り明確にしておくと、条件が絞りやすくなります。
原状回復工事費や引っ越し費用、不用品の処分費用、前家賃、敷金・礼金、仲介手数料、保証会社費用、火災保険料・地震保険料など、さまざまな費用がかかることを把握しておきましょう。
現在のオフィスで契約解除の意思表示(解約予告)が必要です。
契約上、6か月前には解約予告をしなければなりません。
オフィス移転の際は、退去まで原状回復工事が必要です。つまり、借主が借りた状態に復旧しなければなりません。
具体的には、家具や備品の撤去、床・壁紙・天井ボードの張り替え、パーテーション・カーペット(増設分)の撤去、床下配線の撤去、照明の撤去、回復、清掃などです。
東京・オフィスビルの賃料水準が10年ぶりに下がっています。
東京エリアのオフィス空室率は、Aクラスビルで上昇傾向にあります。
オフィス移転の際は、移転時期や移転にかかる費用、目的などをあらかじめ決めておくことが大切です。