引っ越しや転勤などの理由で家の売却を検討することがあります。
最近では、新型コロナウイルス感染症の影響により、収入が激減し住宅ローンが払えず、やむなく自宅を手放さなければならない人も。
ローン滞納が続くと「競売」にかけられるケースもあります。
実際に「競売物件」とは、どのようなものなのでしょうか?
メリット・デメリット、投資用物件としての注意点まで詳しく解説します。
住宅ローンの返済ができなくなり、債務者が所有する不動産を強制的に売却された物件です。
債権者(金融機関)が裁判所に申し立て、差し押さえて入札方式で売却されます。
通常、住宅ローンを組んで家を購入する場合は、金融機関(銀行)が抵当権を設定します。
ローンの返済ができなくなった際に備えて、金融機関が債務者が購入する土地と建物を担保として押さえておきます。
しかし、家の所有者(債務者)は、金融機関に引き渡すことなくそのまま住み続けることができます。
不動産の競売は「担保不動産競売」「強制競売」があります。
強制競売は、 不動産に限らず、自動車、船舶、航空機、建設機械なども対象となります。
不動産競売には、事件番号が付されます。
例:(令和〇年(ケ)第〇〇〇号)(令和〇年(ヌ)第〇〇〇号)
競売の申し立てた順番に割り当てられます。
不動産競売は、以下のような流れで行われます。
正式名称は「担保不動産競売開始決定通知」で、債権者が裁判所に競売を申し立て、裁判所がそれを受理したことを示す通知です。
競売開始通知が届くと、裁判所が任命する執行官と不動産鑑定士が競売の対象となる自宅を訪れ、家の外観や室内を調査します。
物件の写真撮影なども行い、評価額を算定します。
この現況調査は、拒否することができません。
現況調査の後は、「期間入札の公告」が行われ、3点セットが公開されます。
3点セットとは、「物件明細書」「現況調査報告書」「評価書」の資料を指します。
「物件明細書」とは、対象となる物件の売却条件や権利関係などを記載した書面です。裁判所書記官が作成します。
「現況調査報告書」とは、裁判所が任命する執行官が競売不動産の土地、建物、占有状況などを調査した書面です。
関係人の陳述等や執行官の意見も記載されています。
「評価書」とは、評価人(不動産鑑定士)が作成した物件の概要、評価額や算出過程が記載された書面です。
次に入札が開始されます。入札には、期間入札と期日入札があります。
開札は、入札の期日を迎え、執行官が入札書の入った封筒を開封して行われます。
最も高い金額で入札した人が落札者となります。
開札からおよそ1週間以内に落札者に売却するかどうかを決定します。問題がなければ、裁判所から売却許可決定が出されます。
その後「代金納付期限通知書」に基づき代金を納付します。
裁判所は登記所に対して、所有権移転登記をするよう嘱託します。
競売不動産の情報は、不動産系情報誌や新聞、裁判所が運営するBTI(不動産競売物件情報サイト )不動産競売流通協会(FKR)で確認できます。
BTIと981.JPでは、3点セットのダウンロードが可能です。
アパートやマンション、一戸建て、土地から事務所、店舗、ビル、農地、山林まで、競売物件の対象が広くなっています。
不動産会社から物件を購入する際には、消費税が課税されますが、競売物件では消費税がかかりません。
競売物件は、債権回収のため裁判所が強制的に売却する手続きであるためです。
通常の不動産売買では、所有権移転登記や抵当権抹消登記を司法書士に依頼したり、売買契約書を取り交わすことがありますが、競売物件では、登記などの手続きは裁判所が行います。
落札者は、暴力団員等に該当しない旨の陳述書等の提出や保証金の納付、代金の納付などシンプルな手続きで完了します。
市場価格の5割〜7割程度で購入することができるので、安値で売れるケースが多いです。
競売にかけられる前に任意売却を検討するのも1つです。
任意売却とは、住宅ローンを滞納している状態で金融機関との合意により、不動産を売却する方法です。
任意売却では、経験や実績が豊富な不動産会社に物件査定を依頼すると、市場価格に近い金額で売却できる可能性もあります。
競売物件を落札しても、占有者が立ち退きに応じてくれないケースもあります。
交渉が難航すれば、買受人は、裁判所に引渡命令を申立てることになります。
競売物件では、執行官と不動産鑑定士が競売の対象となる自宅を調査に来るので、近隣住民などに知られてしまう可能性があります。
事前の内見ができないため、3点セットに記載された情報を中心に購入するかどうかを決めなければなりません。
売主がいないために契約不適合責任を問うことができません。物件の不具合や破損を見つけた場合、自分で修繕する必要があります。
ここでは、競売物件の仕組みやメリット・デメリット、投資物件としての注意点までを解説しました。
競売物件は安く購入できる可能性がある反面、リスクもあります。
不動産投資初心者の方にとっては、安易に手を出すと大きな損害を被る場合もあります。
まずは、競売物件の専門家に相談するのもひとつです。