不動産の売買取引に関する「IT重説」が本格的に開始されているのをご存知でしょうか?コロナ禍において、対面での不動産売買取引よりITを使った非対面方式での取引が増えつつあります。そこで今回は「IT重説」の仕組みから重要事項説明の内容、IT重説の注意点などを解説します。
不動産取引の重要事項説明をITシステムを利用して対面と同様の方法で行うことを指します。
具体的には、パソコンやスマートフォン、タブレットなどの端末を使用してビデオ通話で非対面として重要事項説明を行います。
Web会議システムは、ZOOM、Skype、LINE、Google Meet、Microsoft Teamsなどがあります。
「重要事項説明」とは、宅地建物取引士が契約前に買主や借主に対して、書面を交付し、宅地建物取引業法35条で規定されている事項を説明しなければなりません。
「35条書面」とも呼ばれています。
通常は、不動産屋で対面形式で重要事項説明が行われますが、2017年10月1日からオンラインシステムを使った賃貸取引の「IT重税」が可能となりました。
そして、2021年3月30日から売買取引に関する「IT重説」が本格スタートしました。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、非対面である「IT重説」の需要が高まっています。非対面であれば、不動産屋へ来店することなく不動産取引が実現します。
ここでは、重要事項説明の内容や説明方法を解説します。
宅地建物取引士証を相手に見えるように掲示します。このときに必ずしも専任の宅地建物取引士である必要はありません。
重要事項説明は省略することができません。必ず説明することとなっています。
重要事項説明書には、宅建建物取引士の記名・押印が必要です。
表題部には、記録された所有者の氏名や建物の構造や床面積、所在地などが記載されています。
権利部には「所有権に係る登記」と「所有権以外の登記」、仮登記や買戻し特約の登記の確認、抵当権の設定などが記載されていることがあります。
「都市計画法」では市街化区域や市街化調整区域などの内容、「建築基準法」では建ぺい率・容積率、高さ制限などが記載されます。
私道の位置、面積、負担金などについて説明します。
建物の貸借は、説明不要です。
飲用水・電気・ガスのインフラの有無、公営か私設か、都市ガスかプロパンガスなのか、また、施設が未整備であれば見通しも説明します。
宅地に接する道路の幅員、建物では内装や外装の構造など、平面図で説明します。
建物状況調査は、構造耐力上主要な部分や雨水の侵入を防止する部分などの劣化・不具合を調査します。
宅建士業は、建物状況調査を実施しているかどうか(過去1年以内)、実施している場合におけるその結果の概要を説明します。
敷金、礼金、手付金、固定資産税・都市計画税等の精算金、管理費などの金銭の額と目的を説明します。
どのような場合に解除ができるのか、どのような手続きで解除を行うのかなどを説明します。
契約違反があった際にあらかじめ損害賠償額の予定や違約金について取り決めておく事項です。違約金は、一般的に売買代金の20%以内とされています。
宅建業者が自ら売主で、一定額を超える手付金等を受領する際の保全措置です。
宅建業者が物件を引き渡す前に倒産した場合、手付金が返還される買主保護を目的とした措置です。
支払金または預り金の保全措置を講ずるかどうかなどを説明します。
受領する金額が50万円未満のものは説明不要です。保全措置自体は任意です。
住宅ローンの申込先や借入期間、金利、返済方法などについて説明します。
売主の倒産など、担保責任を負うことができない場合に保険への加入などの措置を講じるかどうかを説明します。
代金の全部または一部を目的物の引渡し後1年以上の期間にわたり、かつ、2回以上に分割して受領することを定めたものです。
現金販売価格、割賦販売価格、頭金、割賦金、支払時期、支払方法なども説明します。
敷地権の種類と内容、共用部分に関する規約、専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約等の定めなどを記載します。
ここでは、非対面で実施することができる「IT重説」の注意点を解説します。
宅地建物取引士と契約者の双方が安定したインターネット環境が必要です。重要事項説明を行っている途中で回線が不安定になると、契約者が内容を聞き取れなくなる可能性があるためです。
重要事項説明書や賃貸借契約書等は、事前に相手方へ送付しておく必要があります。 記名捺印についても書面で行います。
このようにオンラインですべて完結するわけではありません。
ここでは、IT重説の仕組みや重要事項説明の内容、IT重説の注意点などを解説しました。不動産業界ではまだまだ積極的に活用されている状況ではないですが、国会でデジタル改革関連法が成立したことにより、今後の宅地建物取引業法に規定される手続きの電子化が進んでいくでしょう。したがって、法改正をきっかけにIT重説がこれまで以上に利用されることが期待されています。